企業の方へ
フリーランスに仕事を頼む企業の義務
取引条件の明示、支払期日、禁止されている行為。発注する側に課される義務を、社内の運用に落とせる形で整理しました。
フリーランスや個人事業主に仕事を頼むとき、発注する側には守るべき義務があります。「うちは小さい会社だから関係ない」と思われがちですが、対象になるかどうかは会社の規模だけで決まりません。
このガイドは、義務の中身を「社内で何を用意すればよいか」という形に置き換えたものです。
**このガイドでは、日数や金額の具体的な要件を書きません。**改正で変わる部分であり、確認しないまま書き写すと、かえって事故のもとになるためです。要件は、末尾に挙げた官公庁の案内でご確認ください。このガイドは、確認すべき論点の地図としてお使いください。
義務は大きく 4 つに分かれる
- 取引条件をあらかじめ示すこと
- 報酬を決められた期日までに支払うこと
- してはいけないことをしないこと
- 働く環境について配慮すること
順に見ていきます。
取引条件をあらかじめ示す
口頭で「これお願い」と頼んで、あとから金額を決める。このやり方が問題になります。仕事を頼む時点で、条件を書いて渡す必要があります。
書いて渡すものに含める項目は、おおむね次のとおりです。
- 発注する側と受ける側が誰か
- 業務の内容
- 報酬の額(決められない場合は、決め方)
- 支払期日
- 支払方法
「書いて渡す」は紙でなくて構いません。電子メール、チャット、発注書の画像でも、相手が後から見返せる形で残っていれば足ります。
社内の運用に落とすと
- 発注のひな形を 1 つ作り、全員がそれを使う
- 口頭で頼んだら、その日のうちに同じ内容をメールで送る
- ひな形に「業務の内容」欄を作り、空欄のまま送れないようにする
いちばん多い事故は、忙しい月に口頭だけで走ってしまうことです。ひな形を作っておくと、これが防げます。
報酬を期日までに支払う
成果物を受け取った日を起点に、支払期日には上限があります。「検収が終わってから」「翌々月末」といった社内の慣行が、そのまま使えるとは限りません。
再委託する場合の扱いは別に定められています。自社が受けた仕事を、そのままフリーランスへ流す場合は、必ず確認してください。
社内の運用に落とすと
- 支払サイトを、フリーランス向けだけ別に設定する
- 検収の遅れが支払の遅れにならないよう、検収期限を社内で決める
- 経理と現場で「受領日」の定義をそろえる
してはいけないこと
一定期間以上の継続的な取引では、次のような行為が禁止されます。
- 受け取りを正当な理由なく拒む
- 報酬を後から減らす
- 受け取ったものを返す
- 相場より著しく低い報酬を不当に定める
- 指定するものを強制的に買わせる、使わせる
- 金銭やサービスを提供させる
- 内容を変えさせる、やり直させる(正当な理由がない場合)
「やり直し」が禁止されるのは、発注側の都合で内容を変える場合です。最初に決めた内容を満たしていないから直してもらう、というのは別の話です。だからこそ、最初に業務の内容を書いて渡すことが効いてきます。
社内の運用に落とすと
- 仕様変更をお願いするときは、追加の報酬をセットで提示する
- 値引き交渉は、次の発注の単価で行う(確定した報酬を後から下げない)
- 「サービスで」という言葉を使わない
働く環境について配慮する
募集の情報を正確に出すこと、育児や介護と両立できるよう配慮すること、ハラスメントへの対策を取ること。これらも求められます。
ハラスメント対策は、相談窓口を決めて、社内に周知することが起点です。従業員向けの窓口がすでにある会社は、そこで外部の方からの相談も受けられるようにしておくと、新しく作らずに済みます。
契約が途中で終わるとき
継続している取引を打ち切るときは、あらかじめ知らせることが必要になる場合があります。「来月から発注しません」と月末に伝える、というやり方は避けてください。
社内の運用に落とすと
- 継続案件の一覧を作り、終了予定を記録する
- 打ち切りの判断は、予告できる時期から逆算して行う
最低限、社内で用意するもの
| 用意するもの | 目的 |
|---|---|
| 発注のひな形(電子メールで可) | 取引条件の明示 |
| フリーランス向けの支払サイト | 支払期日 |
| 仕様変更のときの追加報酬の決め方 | 禁止行為の回避 |
| 相談窓口の周知文 | ハラスメント対策 |
| 継続案件の一覧と終了予定 | 中途解除の予告 |
この 5 つがあれば、日々の運用で大きく外すことは少なくなります。
違反が見つかったときに何が起きるか
行政の調査が入り、指導や勧告を受けることがあります。勧告に従わない場合は、社名の公表や命令に進むことがあります。
実務上、より痛いのは別のところです。**取引を断られるようになります。**フリーランスの間では、支払いが遅い会社、あとから値引きを求める会社の情報は速く伝わります。良い人ほど、そういう会社を避けます。
義務を守ることは、罰を避けるためだけではありません。継続して良い相手に頼み続けるための条件だと考えてください。
相談を受けたときの社内の動き方
フリーランスの方から「話が違う」と言われたとき、最初にやることは記録を集めることです。
- 発注時に何を書いて渡したかを探す
- その後のやり取り(電子メール、チャット)を時系列に並べる
- 実際の支払日と、契約上の支払期日を突き合わせる
**この 3 つが出てこない案件は、たいてい口頭で走っています。**出てこなかった場合は、そこが直すべき運用です。
記録を集めたうえで、こちらに非があるなら早く認めて直してください。引き延ばすほど、行政への申告や公表につながりやすくなります。
年に 1 度は棚卸しする
継続して発注しているフリーランスの一覧を作り、年に 1 度は次を確認してください。
- 発注時の書面が全件そろっているか
- 支払期日を守れているか
- 仕様変更の際に追加の報酬を払っているか
- 終了予定が近い案件に、予告の準備ができているか
一覧は表計算ソフトで十分です。作ることより、毎年同じ形で見直すことに意味があります。
よくある質問
Q. 当社には従業員がいません。それでも対象になりますか
対象になる場合があります。従業員の有無によって課される義務の範囲が変わる仕組みになっているため、**「従業員がいないから全部関係ない」とは言えません。**自社がどの範囲に当たるかは、末尾の官公庁の案内でご確認ください。
Q. 継続的な取引ではなく、単発で 1 回だけ頼む場合も同じですか
取引条件を示す義務は、単発でも生じます。一方、禁止行為として定められているもののうち一部は、一定期間以上の継続的な取引が前提です。単発なら何をしてもよい、ということではありません。
Q. 相手が法人(一人会社)の場合はどうなりますか
法人の形を取っていても、従業員を使わずに事業をしている場合は対象になり得ます。**「法人だから対象外」という切り分けはできません。**相手の形態ではなく、実態で判断されます。
出典と確認日
このガイドに書いた義務の区分は、次の官公庁の案内にもとづいています。日数・金額・対象範囲の具体的な要件は、必ず下記でご確認ください。
- 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」に関する案内。確認日 2026-09-18
- 中小企業庁の同法に関する案内(発注者向けの解説、相談窓口)。確認日 2026-09-18
- 厚生労働省の同法に関する案内(募集情報、育児介護への配慮、ハラスメント対策、中途解除の予告)。確認日 2026-09-18
- 下請代金支払遅延等防止法との関係(どちらが適用されるかは取引の形態で変わります)。公正取引委員会の案内をご確認ください。確認日 2026-09-18
**このガイドは一般的な考え方をまとめたもので、個別の助言ではありません。**自社の取引が対象になるか、どの義務が課されるかの判断は、弁護士にご相談ください。次回の見直しは 2026 年 12 月を予定しています。
このガイドは公開情報をもとに AI の補助で下書きし、PRONOWA 運営が確認・加筆しています。 このガイドは一般的な考え方をまとめたもので、個別の助言ではありません。個別の判断が要ることは、弁護士・税理士・社会保険労務士にご確認ください。
